通訳者の仕事の中の放送通訳について紹介します。
当初、会議通訳者を集めてスタートした放送通訳は、試行錯誤を経て、今ではそのノウハウが蓄積されています。
さらに、CSやケーブルテレビの参入によるデジタル多チャンネル時代を迎え、放送通訳者の需要は増える傾向にあります。
現在、日本で最も多くの放送通訳者が活躍している放送局はNHKです。
「BSワールドニュース」では13カ国、11言語、19放送局のニュースを日本語で放送しています。
これらのニュースの日本語訳を手がける放送通訳者の数は、英語が約100人で、それ以外の言語で多いのは中国語約40人、ロシア語とフランス語が約30人です。
放送通訳には大きく分けて2種類があります。
1つは「時差通訳」と呼ばれ、放送局が海外ニュースを受信してから日本語で放送するまでに数十分〜数時間の「時差」があるもので、通訳者はその間に、録画されたニュースを聞きなおし、メモを取ったり、用語を調べたりして準備をします。
現在、定時ニュース番組のほとんどが時差通訳ですが、その準備時間は海外との時差によって大きく変わってきます。
もう一つは同時通訳で、通訳者は番組放送のときその場で始めてニュースを聞き、放送に合わせて同時通訳をします。
放送通訳のうち約7割を占める海外ニュース番組の日本語訳の場合、同時通訳をするのは主に緊急ニュースや世界的な式典の生中継の場合などです。
放送通訳と会議通訳の両者の最大の違いは、聞き手がいっぱんの視聴者という点にあります。
たとえば会議通訳では、話す側も聞く側も専門家同士の場合が多いので、専門用語の使用や、早口になってしまうこともさほど問題になりません。
しかし、放送通訳では、子供からお年寄りまで、誰にでも理解できる分かりやすい日本語が求められます。
それには語彙の選択や、適切なスピードを考慮しなければなりません。
そこで放送通訳者は、話の内容を要領よくまとめ、情報を省略することなく簡潔な表現が必要になります。
また、高い外国語力を前提とした高度な日本語の編集能力と、明瞭な日本語を話すことが重要になります。